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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)13126号 判決

原告

岩崎千鶴子

原告

岩崎富治

原告

岩崎靖登資

右法定代理人親権者

岩崎千鶴子

右三名訴訟代理人

美作治夫

被告

岩崎てい

被告

合資会社岩崎機械製作所

右代表者無限責任社員

岩崎誠治

被告

岩崎誠治

右三名訴訟代理人

佐々木敏行

主文

一  被告岩崎ていは、別紙物件目録(一)記載の建物について東京法務局昭和五四年八月八日受付第壱〇六九号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

二  被告合資会社岩崎機械製作所は、別紙物件目録(二)記載の建物について東京法務局台東出張所昭和五四年五月弐参日受付第壱壱七九弐号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

三  被告合資会社岩崎機械製作所は、別紙物件目録(三)記載の建物について東京法務局台東出張所昭和五四年五月弐参日受付第壱壱七九参号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

四  被告岩崎誠治は、別紙物件目録(四)記載の建物について東京法務局北出張所昭和五四年五月弐参日受付第壱九六壱〇号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

五  訴訟費用は被告らの負担とする。

事実《省略》

理由

一訴外丙次は昭和五三年九月二四日死亡したこと、被告ていは訴外丙次の妻でありその相続人であること、被告会社は訴外丙次が生存中、その無限責任社員であつた会社であることは、当事者間に争いがない。

原告千鶴子がその夫、亡史郎とともに戸籍上、訴外丙次の養子であり、原告富治、同靖登資は右縁組後、原告千鶴子と亡史郎との間に生れた子供であること及び亡史郎が訴外丙次より以前に死亡したことは、当事者間に争いがなく、右養子縁組は目下、当庁昭和五四年(タ)第四九六号養子縁組無効確認請求事件において無効か否かにつき争われているとはいえ、未だ判決により無効が宣言されているわけではない現時点においては、右戸籍上の記載に従い、原告千鶴子は訴外丙次の相続人であり、原告富治、同靖登資もその代襲相続人であると認めるのが相当である。

二請求原因4ないし6項〈編注―「4 被告ていは、訴外丙次に対して同人が既に死亡していることを知りながら、別紙物件目録(一)記載の建物につき昭和五三年八月三日、訴外丙次から贈与を受けたとしてその旨の所有権移転登記手続を求める訴を東京地方裁判所に提起し(同庁昭和五四年(ワ)第三一八一号)、昭和五四年五月二五日欠席判決を得て、同判決に基づき主文第一項記載の所有権移転登記手続をした。

5 被告会社は、訴外丙次に対して同人が既に死亡していることを知りながら、別紙物件目録(二)、(三)記載の各建物につき昭和五三年九月二〇日、訴外丙次が真実の所有者である被告会社に名義を移転することを承諾したとして真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求める訴を東京地方裁判所に提起し(同庁昭和五四年(ワ)第一一三八号)、昭和五四年四月二七日欠席判決を得て、同判決に基づき主文第二項、第三項記載の各所有権移転登記手続をした。

6 被告誠治は、訴外丙次に対して同人が既に死亡していることを知りながら、別紙物件目録(四)記載の建物につき昭和三六年七月一日、訴外丙次から贈与を受けたとしてその旨の所有権移転登記手続を求める訴を東京地方裁判所に提起し(同庁昭和五四年(ワ)第一一三八号)、昭和五四年四月二七日欠席判決を得て、同判決に基づき主文第四項記載の所有権移転登記手続をした。」〉の各事実は当事者間に争いがなく、被告らが訴外丙次を相手取り提起した事件において、裁判所からの訴外丙次あての送達書類を同訴外人になりすまし、又はその同居人として受領する方法によつて裁判所を欺き、かつ訴外丙次の欠席等による擬制自白の効果を悪用して勝訴判決を得たものであることは、当裁判所に顕著である。

したがつて、本件各登記は、登記権利者が右のような不正な手段によつて得た無効な判決(その内容に適合した効力を生じ得ないという意味で)を原因証書として利用した、いわば登記名義を詐取したと同視し得る極めて違法性の強い手段を弄してなされたものであつて、その瑕疵は重大であり、このような登記は、登記義務者において右手続上の瑕疵を理由としてその抹消を求めることができるものと解するのが相当である。

そして、本件各登記の登記義務者は訴外丙次の相続人であるから、原告らにおいてその抹消を求めることができるものといわねばならない。

三以上によれば、抗弁については判断するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由があるのでこれを認容し、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。 (丹野益男)

物件目録〈省略〉

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